2015年フォーラムは中国・北京大学にて開催されました.シリア, ドイツ, UAE, オランダ, インド, 米国, パキスタン, スイス, バングラデシュ, 中国, 日本, インドネシアなど世界中から選抜された40人が北京大学スタンフォードセンターに集まりました. フォーラムでは参加者同士で互いの国,文化,歴史について共有するだけではなく,将来の夢やキャリアなど,より個人的な話題を取り上げる様子も見られました. フォーラムでは米国,ヨーロッパ,中国,日本の各支部からの学生がグループに参加するため,文化圏の違う人々との共同作業に戸惑う参加者も現れましたが,他では味わえない経験が出来たと考えています.
  2015年度のテーマ『Era of Information』では, Jeremy Chau様にキーノート・スピーカーとして講演頂きました. Mr. Chauは103人目のエンジニア正社員として, Googleのベンチャー時代を経験し, 中国法人の立ち上げにも寄与するなど, ITインダストリーに精通した経験と知識を有しています. Google退職後にはエンジェル投資家として活動するだけでなく, Jide社を立ち上げるなどスタートアップの起業も行っています. 様々な経験を持つ氏からリーダーシップやビジョンなどについて講義いただき, 参加者や運営側にとって非常に貴重な機会となりました.  リーダーシップセッションではリーダシップ理論, チームワーク, 人間関係についての講義を通じて, 組織で活躍する方法論のみならず, 組織効率化の実践的アプローチなどを学びました. また, このセッションでは本フォーラムのサブ・テーマに基づいたInternet of Things(IoT)を利用したプロトタイプをグループと共に製作し, 学んだスキルや知見をより現実に近い, 相互理解が必要とされる環境で実践することができました.

 


サブテーマ
本フォーラムのテーマはIoT,サイバーセキュリティ,人工知能,ビッグデータの4つのサブテーマに分かれています.テーマ別セッションでは各サブテーマにまつわる問題について学び,STeLAがワークショップで課題を出す前に,簡単な説明を行いました。

Internet of Things -モノのインターネット

 ”インターネットという概念は将来無くなるだろう。数え切れないほどのIPアドレスや機器、センサー、あなたが身につけているモノ、あなたが双方的に使用しているモノなどの存在にあなたはいつか気付かなくなる。なぜなら、それは常にあなたの周りに存在しているからだ。.”―エリック・シュミット ,Google 元CEO

 エリック・シュミットが世界経済フォーラムにて発言したメッセージは, 我々の日常において現実味を増しています. 情報技術は特筆すべき勢いで進化し, インターネットは私たちにとって, 以前よりもより身近なものとなってきています. 現在はパソコンやスマートフォンなどの電子機器などに限らず, 生活品や交通機関, 農業,金融など全てのインダストリーに情報技術が応用され、私たちの生活のありとあらゆる場面で, 気づかないうちに情報技術が使用されているのです. レガシー産業にも侵食しつつあるインターネットは, それこそ私たちが吸っている空気のように,「常に存在しているのが当たり前」のものに将来なっていくということを, エリックは予言しています.
  IoTセッションでは, まず最初にIoTの概念及び今後の活用手段などをレクチャーを通じて学び, 次, ワークショップでIoTを利用したアイデアをグループ内で議論し, 制限時間内にグループで複数のプロトタイプを作りました. 実際にアイデアをプロトタイプにまで落とすことで, 参加者に実践的な学びの機会を提供しました.
 


AI - 人工知能
  近年, 人工知能が話題になっていますが, 人工知能の歴史は20世紀中盤から始まっています. 機械による計算が可能になり, コンピュータが開発されると, 今まで哲学・数学・論理学・心理学などの分野で論じられていた「人間の知的活動を行う機械」を作る試みがいくつか始められました. C.ShannonやA.Turingによるチェスのプログラムの作成やM.MinskyとD.Edmondsによる人工ニューロンの制作などの試みがこれにあたります. 紆余曲折な過程を経て, 単純計算とは異なる知的アウトプットを生み出せる技術が可能であることが証明された結果, 近年では進化した人工知能の商業的活用が注目されています. 単なる計算論的な証明から, 商業的活用における実装までに進化したのは, 1980年代におけるニューラルネットのバックプロパゲーション(ニューラルネットワークを学習させるための教師あり学習)・アルゴリズムの再発見が大きく寄与したとされています. イギリスの理論物理学者スティーブン・ホーキング博士やSoftbank会長の孫正義は, 人工知能が近未来において人間の知能を超え, 300年前の産業革命から生まれた機械によってパラダイムシフトが起きたように, 情報技術のビッグバン, つまりシンギュラリティが起きると語っています.
このセッションでは, Lenovo Vice PresidentのMr. Ying Huangにお越しいただき, マシーンラーニングやLenovoでのR&Dについてお話しいただきました.「まだAIは人間の時期でいうと赤ちゃんのような状態であり, 今後もさらなる研究が必要となってくる. だが, 将来におけるAIの潜在能力は凄まじいものだ.」など,IBM Watson研究所の一員でもあり, 人工知能分野の第一線で活躍されるMr. Huangの講演は非常に興味深いものとなりました.


Big Data- ビッグデータ
 ビッグデータはその言葉通り, 情報の量的側面を指し, 事業に役立つ知見を導出するためのデータとして今後より一層社会で活用されることが期待されています. また, データ規模のみならず, どのような構成・特徴が重視されているのかという質的側面において, 従来のシステムとは違いがあると考えられています.ビッグデータを用いれば, 私たちがこれまで分析することが不可能だと考えていたことが, 可能になります. 現在既にウェブサービス分野では活用が進んでおり, オンラインショッピングサイトやブログサイトにおいて蓄積される購入履歴やエントリー履歴, ウェブ上の配信サイトで提供される音楽や動画等のマルチメディアデータなどはビッグデータとして活用されています. 今後活用が期待される分野の例では, 位置, 乗車履歴等のセンサーデータ, CRMシステムにおいて管理されるデータやといった様々な分野のデータが想定されており, さらに個々のデータのみならず, 各データを連携させることでさらなる付加価値の創出も期待されています.
 このセッションでは, STeLA China支部が作成した独自の戦略ボードゲームを通じて,ビッグデータの活用方法や効率化, リスクなどについて他グループと競い合いながら学ぶワークショップを実践しました.


Cybersecurity - サイバーセキュリティ
「なぜ, サイバーセキュリティは重要なのか?」 「そこに脅威があるからだ.」 サイバーセキュリティとは, 年々と複雑化・高度化するサイバー攻撃に対する防護策のことを指します. 個人情報から国家機密情報まで, あらゆる情報がインターネットに接続されており, それらを守るために政府や(非)営利法人のみならず個人レベルにまでにサイバーセキュリティに対する意識は浸透しつつあります. 情報社会に生きる私たちにとって, 知っておくべき分野の一つであることは間違いありません.
 このセッションでは現在360株式会社のCTO及びCPOを務めるXiaosheng Tan様にお越しいただきました. データセキュリティのプロフェッショナルから参加者はサイバーセキュリティの基礎知識を学び, 後にQ&AセッションでTan様とのインタラクティブな時間を設けました.


企業訪問: Lenovo北京本社・Microsoftリサーチアジア
Lenovoは現在世界屈指のテクノロジー企業であり, 中国国内のPCメーカーからグローバルPCメーカーの地位を確立しました. 過去10年の間, レノボはPC市場シェアで1位, スマートフォンで世界3位, x86サーバーでも世界3位と, 著しい成長を果たしてきました. Lenovoは巧みな買収戦略でも世界で評価されています. IBM PCビジネスの買収は, レノボをグローバル企業へと変え, 且つPC業界全体を変えた出来事となりました. その時以来, レノボは世界で最もイノベーティブなパーソナルテクノロジー企業となるために, 絶えず多くのことにチャレンジしました. さらに, 買収はその後の事業拡大の基礎を作り, スマートフォン, タブレット, サーバー, そしてエコシステムと続く現在の成長エンジンの最初の成功となりました.
 マイクロソフトリサーチアジアは, 1999年に, 同社3番目の研究所として中国・北京に設立された. 約220人の研究者が在籍し, 米国本社の研究所の250人に次いで, 2番目の規模を誇る. MSRAでは, ナチュラルユーザーインターフェース, データインテンシィブコンピューティング, データマルチメディア, コンピュータサイエンス, サーチの5つの分野において研究開発を進めており, これまでに3000以上の論文を発表. そのうち20以上の論文が最優秀論文賞を受賞しています.「すべての研究において, その分野の最先端の研究領域を拡大すること」,「革新的な技術を速やかにMicrosoft製品に技術移転すること」,「Microsoft製品の将来性を確実にすること」という基本的な姿勢のもと, 遺産保護, ヘルス, クラウド, 教育という4つの領域において, 研究開発を進めており, さらに大学との産学連携をはじめ, 110以上のプロジェクトでの研究開発を進めています.

Lenovo 本社

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日本支部参加者・運営@Microsoft Research Asia

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