2016年のフォーラムは沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催し、様々なバックグラウンドを持った学生が参加しました. 参加者にはオランダ、中国、日本、オーストラリア、UAEなどの一流大学から学部生、院生、博士課程学生合わせて40名が集まりました. 参加者の専攻は工学、生物学、政治学、経済学、薬学と幅広い分野にわたり、その結果として参加者間での興味深い化学反応が見られました.
今回のキーノートスピーカーにはOISTのジョナサン・ドーファン元学長、OIST男女共同参画担当副学長のマチ・ディルワース博士、北野宏明OIST教授をお迎えしました. ドーファン氏は過去に米国スタンフォード大学が運営するSLAC国立加速器研究所(旧スタンフォード線形加速器センター)の名誉所長などを歴任したのちOISTの学長に就任されました. ディルワース博士は24年間アメリカ国立科学財団(NSF)に在籍し、国際科学技術室長も務めました. 北野博士はソニーコンピュータサイエンス研究所取締役社長およびCEOやシステムバイオロジー研究機構代表も在任し、ロボカップの創立者や犬型ロボットAIBOの開発者としても知られています.
分科会
毎年テーマは分科会で具体化、現実化されます。分科会は参加者にとってフォーラムの前半で学んだリーダーシップスキルを試す機会となります。また、科学技術に関連する最新の話題について学び、議論する場にもなります。2016年のフォーラムのテーマは「科学技術の未来」でした。今年の分科会の詳細は以下の通りです。
A New Community for Science and Technology Development
科学技術の発展のための新しいコミュニティ
情報技術(IT)は日々の生活の面でも科学技術研究の面でも、情報共有の方法を変化させました。ITはまた科学者間の情報共有の不備を防ぎ、研究に効率と革新をもたらす可能性を秘めています。
このセッションでは、科学者の間に広がる問題を解決するための技術を使って、科学のコミュニティを構成する新しいプラットフォームを提案することが求められました。これを実行するには、現在のプラットフォームを分析し、未来の科学コミュニティの傾向を予測する必要があります。
Medical Innovation in Okinawa
沖縄における医療革新
日本本島と何百キロも離れているため、沖縄では日本で行われている医療サービスが十分に提供されていません。このセッションでは、医療科学の最先端の成果の一つである外科医療マシン、Da Vinciを扱ったロールプレイを行いました。
参加者は、外科医、病院長、官吏、沖縄の住人、の4役に分かれて、Da Vinciを2025年までに沖縄の医療に組み込むかどうかを議論しました。各々に異なったメリット、デメリットがあり、全員が納得する結論を出すのは簡単ではありません。最終的な目標は、沖縄医療の規則・規制を定める2025年までの医療計画を作ることです。
The Ethic of Automation
自動操作の倫理
未来の技術社会に関して、多くの人がロボットや自動操作をまず最初に思い浮かべるでしょう。自動運転車が我々の生活に浸透していくにつれ、この分野は多くの関心を集めています。この技術が関心を集めるのは予想されたことでした。しかし、現在広く受け入れられている技術、飛行機の自動操縦と比較してみるのはおもしろいことではないでしょうか。
このセッションでは、参加者間で自動操縦技術の倫理に関する議論を行いました。科学技術はどこまで許されるのでしょうか。社会が間違った方向へ行こうとしたとき、止めるのは誰なのでしょうか。
Think Extreme!
常識をぶっ壊せ!
”世界を変えられると信じる変人だけが、世界を変えられる。”―北野宏明
北野宏明教授(OIST教授、RoboCupの創始者)の活気あふれるご講演に基づき、このセッションThink Extremeでは教授の教えを実現することを目的としました。彼の教えは:創造的になれ、野心的になれ、そして勇気を持て。
参加者は”extreme”な物を考えなければなりません。方法としては共同のブレインストーミングで、出来たものをA4用紙を用いて発表しました。その後、参加者はお互いのアイディアを評価し、その評価に基づき何がより”extreme"なのかを考えることができます。また、このセッションを通して、大衆に自分のアイディアを売る、という練習もできます。
施設訪問:OIST オープンエネルギーシステム及び研究棟のツアー
STeLA Leadership Forum 2016では参加者及びスタッフが沖縄科学技術大学院大学をより深く理解できるキャンパスのツアーに参加し、研究施設や敷地内で行われているオープンエネルギーシステムを見学しました。
オープンエネルギーシステム(OES)は、OISTの教員宿舎の家庭用電力を太陽光発電で生成した自然エネルギーでまかなうようにする、OISTオープンバイオロジーユニットの北野宏明教授およびソニーコンピュータサイエンス研究所のチームが考案したオープンエネルギーシステム(OES)の実証研究です。太陽エネルギーから電力を供給することはすでに珍しくないものの、このシステムの驚くべきところはマイクログリッド構造によるエネルギー供給の安定感です。北野教授が考案したシステムでは、家庭のエネルギーサーバーをDCマイクログリッド状に繋げることによって、各家庭に日照量のムラがあっても全体に均等にエネルギーを供給することが可能になります。不安定なエネルギー源である太陽光に対して、このシステムは持続的に複数の世帯に電力を安定的に供給できる画期的なものなのです。
さらにOISTの研究棟では、科学技術分野の先端をリードするような研究、そして研究者間の交流が行われています。OISTではコラボレーション、共同研究できる研究者の育成をも目指しており、学生が自分の専門分野だけに偏らないよう、研究分野間の境界がないような構造、デザインになっています。OISTの学生であれば、専門にかかわらず研究等にある機械や道具を利用することができ、分野にとらわれない研究も実現可能です。OISTの学生が実際にどのような研究を行っているのかも直接聞くことができ、参加者(スタッフ含め)自分が学びたい分野、研究を行いたい内容について考えさせられる機会を与えてくれました。
以下は、我々が訪れた実験室の代表である教授群です:
・北野 宏明 教授 (総合オープンシステムユニット)
・政井 一郎 准教授 (神経発生ユニット)
・横林 洋平 准教授(核酸化学・工学ユニット )
・ケシャヴ・M・ダニ 准教授 (フェムト秒分光法ユニット)
・イェ・ジャン 准教授 (生体模倣ソフトマターユニット)